株式会社ドクターネット

導入事例

CASE STUDIES

大田原赤十字病院

最適な読影環境を追求 PACS導入によるフィルムレス化で安全な医療を提供(『DIGITAL MEDICINE』Vol.6 No.3)

栃木県の人口は約201万人.1949年にオープンし約60年,那須を中心とする県北地域の医療を支えているのが,大田原赤十字病院である.東北新幹線・那須塩原駅から車で15分ほどのところに同院はある.同院が位置する県北は宇都宮以南と比べ人口密度が低く,カバーするエリアは広い.医療圏の人口は約23万人.栃木県内の医療機関は獨協・自治の二つの医大病院,済生会宇都宮,足利・大田原・芳賀の日赤が中核医療機関的役割を担っている.
同院の病床数は556床.標榜科目は,内科,消化器科,循環器科,呼吸器科,小児科,外科,心臓血管外科,放射線科など,20科.救命救急センター,災害拠点病院,へき地医療拠点病院などの指定を受けている

県北の医療を支える

栃木県の人口は約201万人.1949年にオープンし約60年,那須を中心とする県北地域の医療を支えているのが,大田原赤十字病院である.東北新幹線・那須塩原駅から車で15分ほどのところに同院はある.同院が位置する県北は宇都宮以南と比べ人口密度が低く,カバーするエリアは広い.医療圏の人口は約23万人.栃木県内の医療機関は獨協・自治の二つの医大病院,済生会宇都宮,足利・大田原・芳賀の日赤が中核医療機関的役割を担っている.
同院の病床数は556床.標榜科目は,内科,消化器科,循環器科,呼吸器科,小児科,外科,心臓血管外科,放射線科など,20科.救命救急センター,災害拠点病院,へき地医療拠点病院などの指定を受けている.
全国の地域中核病院では,医師不足が深刻化しているが,同院も,内科医師を中心に大学への引き上げが加速しているとのこと.外来の患者数を制限する日々が続いている.1日の平均外来数はこの2年間で約1050件から約750件に減少しているということで,経営への影響も少なくない.
同院は3次救急指定を受けているが,地域に救急を受け入れる病院が少なく,1次救急の患者も多数訪れる.最近は1次救急を制限しているが,一時は救急の年間件数33,000件の内,87%が1次救急だったという.2005年に64スライスMSCT,1.5Tの全身用MRIが導入された背景には,救懲医療のさらなる充実があるようだ.
「当院では全ての画像診断を放射線科医が監督,施行,診断して,救急診療に積極的に加わっています.急性胆嚢炎,急性膵炎,閉塞性黄疸,腹部鈍的外傷などではIVRを用いる治療が放射線科医によって行われています」と語るのは放射線科・水沼仁孝部長.現在,放射線科は常勤4名(内2名はレジデント),非常勤2名(腫瘍放射線科医)の体制で画像診断,放射線治療,InterventionalRadiology:IVRを行っている.ちなみに診療放射線技師は16名が勤務している.主なモダリティは,MSCT(6スライス,64スライスの2台),l.5T­MRI(1台),RI(1台),超音波診断装懺(2台),DSA(1台),マンモグラフィ(1台),一般撮影にはFCRとフラットパネルディテクタ(以下,FPD)が導入されている.また,画像処理専用Workstationが導入されており,主に血管系の3D画像,手術シミュレーション バーチャルエンドスコピーなどの画像処理に活用されている.患者へのインフォームドコンセント,カンファレンスに威力を発揮しているということだ.
「院内で発生するほとんどの画像は放射線科でレポートを作成しています」と水沼部長が語るように,インタビューの途中にもどんどん読影依頼が入ってくる.CT,MRIはもちろんのこと一般撮影・超音波検査に関しても読影医がレポートを必ず作成するということだ.同院では2001年に東芝社製のmini-PACSが導入され,救急のCT,一般撮影,ドック・健診の消化管造影と胸部写貞をデジタル化しモニタ読影を開始した.
その後2002年10月にドクターネッ卜社の遠隔画像診断システムを導入.最新のMRIは昨年10月1日から稼動をはじめ,診療放射線技師16人全員のトレーニングも12月末で終了した.「頚椎と頭部は救急で24時間撮像できるような体制を敷いています.当院は脳卒中の拠点病院ですので,『24時間MRI稼動』が必須です」.日本の医療機関では,MRIが24時間撮像できるところはほとんどなく,「急性期の脳血管障害」に対する市民の不安軽減に寄与している.「やっと,今その段階に入りつつあるのです」と水沼部長は力強く語る.
MRIの1日の検査件数は,約29件.1時間に3人ほどの検査が行われる.空いた時間に入院患者をコールで呼び出し撮像するというスタイルで検査は行われる.CTの場合,外傷の頭頚部の平均スライス数は500スライス,外傷による全身撮影の場合は,1700スライスという膨大なデータ量になる.院内はフィルムレスで院外からの依頼が増加しているとのこと.
「外部からの依頼による検査の割合は,CTが13~15%,MRが9%くらいでしょうか,現在もその割合は増加の傾向にあります」と水沼部長.近隣医療機関の同院に対する信頼が数字に反映されている.
現在,ドクターネットの遠隔画像診断ネットワークで那須南病院,黒磯病院,尾形クリニックの3ヶ所とブロードバンドで画像連携が行われている.遠隔診断検査累計の総件数(1ヶ月)が約450件.依頼先の病院のサーバに向けてレボートを送信すると,自動転送されて,相手のサーバの中にレポートが入るようになっている.回線数は技術的にはまだまだ増やせるということだ「今後の病院運営で地域連携は必須」と水沼部長は語っている.スタッフやインフラの整備が進めば,現在3施設との連携もさらに拡張する方向性ということだ.

水沼仁考放射線科部長

PACSが読影業務を効率化

モダリティの進化によって年々増加する膨大な画像データを水沼部長は「読影業務に深刻な影聾及ぼす」と以前から危惧していたという.
MSCTの導入もあり早急なフィルムレス化が検討され,ドクターネット社のPACS-NewDr.PACSおよびModalityWork-listManagementsystem(以下,MWM)が導入されだ2005年8月より運用されており,院内の画像は完全フィルムレスとなっている.
読影室には画像用読影端末6セットが整然と並んでいる.読影医はIDとパスワードを入力することでどの端末でも作業をすることができる.
諒影室とサーバの基幹ネットワーク部分はlGbpsだが,外来のある1階診察室はlOOMbpsでネットワーク構築されている.web配信と軽いデータの送信だが「それでもストレスはありますから,できればネットワーク環境の再整備も行いたい」と水沼部長は語っている.
導入されたNewDr.PACSは3D&fusion画像生成機能を実装したPACSである.システムの稼働状況について水沼部長に聞いてみた.
「システムの稼働状況は良好です.オーダリングシステムと連携し検査の効率化にも寄与しています.現在,画像の格納はサーバー(3tera)のHDに納められています.実際の読影業務では画像の展開も容易ですし,MPR,MIP,3Dなどの表示機能も充実しています.ドクターネット社の本社が宇都宮市にあるということもあり,連携しながら最瘤なシステムに仕上がっていると感じています.放射線科業務は検森からレポートを作成し臨床医に対してプレゼンテーションするまでが業務です.そうしたワークフローがよ<理解されたシステムだと考えています.読影レポートは画像サーバに登録され,共有しながら活用することが可能で,レポートの保存も管理も簡単です.生成した画像のレポートへの添付もマウス操作だけで行えます.全スクリーン画像から,key画像部分のみをキャプチャーして貼り付け,音声ファイルを作成するだけでレポートは完成です.画像はJPEG,BMP,DICOMで保存が可能で,CD-Rなどのメディアにコピーすることも容易に行えます.それから,他のシステムベンダーよりも比較的安価にシステム構築が可能というのは,選択の大きな要因でした」.
ベンチャー企業ということもあり,ユーザーの話にも耳を傾けてくれると水沼部長「より使いやすいシステムになるために,モダリティごとに色を変えるというような,細かい注文を出しています.その一つ一つに答えてくれています.本社が宇都宮でシステムエンジニアが大田原在住ということで,コミュニケ一ションも容易」とのこと.PACS本格稼動から半年になるが,「満足できるレベルにある」ということだ.
患者情報の取り違えや効率的な放射線科運用を行うために,MWMも導入されている.MWMはオーダリングシステムなどで予約が確定した受診者情報を取得し,各モダリティに自動的に転送するシステムである.これによって各モダリティで基本情報を入力する手間が省け,さらに入力ミスがなくなる.モダリティスケジューリングにより,モダリティの予約状況を一元管理できる.「どのモダリティがいつ予約可能なのか迅速に把握できるので,予約業務がスムーズになっています」(水沼部長)とのこと.
「今のところ,トラブルになるのは一般撮影だけです.CTやMRIはオーダリング,予約,撮影までMWM,PACSなどのシステムでコントロールされおり,基本情報の入カなどの単純なミスが起こる危険性はなくなりました.FCRやFPDの画像は検像端末でベテランの技師がチェックしてDICOMサーバに送っています」(水沼部長).
フィルムを出力していないため,院外に画像を持ち出す場合には,DICOM情報をCDに出力している.
「院内は端末のどこででも見ることができますが,他の施設に持って行く時は,『何月何日に何を撮影』というように病院のロゴを印刷して,渡すようにしています」(水沼部長)とのこと.簡易ビューアがCDの中に入っているので,WindowsXP以上のPCであれば問題なく画像を見ることができるということだ.

 

 

読影医が疲れない環境とは

読影室に入った瞬間惑じたのは『クリーンで明るい』という印象。なんといっても圧迫惑がない.これは部屋の読影端末からトランスクライバの机,書棚,サーバ保管,MRI·CTのコンソールにいたるまで,あらゆるものがワイヤーシェルフ・ホームエレクターで収納されているからだ.「ドイツ製のホーム工レクタ一を採用しています.ここ5,6年何かを導入する時は,ほとんどセットでホームエレクターも注文しますねステンレス索材です」ということだ.トランスクライバーの机の下にはキャスターが付いており,働きやすいスペースに移動して仕事をすることが可能である.かなり丈夫なのか説影モニタの上に重そうな医学書が並んでいるが「ビクともしない」と水沼部長.
読影方法は様々な試行錯誤を繰りかえし,読影医の負担にならないような工夫がなされている.「クオリティの高い読影レポートを作成するにはその環境も重要です」と水沼部長は語る.

 

 

円を描くようなマウス操作

「モニタ,キーボード,マウスの配償については,様々な工夫を行ってきました.フィルムレス化に伴い,読影室ではモニタのみで診断を行っています.現在は,最も快適と思われる位謂にモニタを配置することができました使用しているモニタは画像用が2Mの白黒(一部カラ一)20inchモニタ:2台の下部にテキスト用に17inchカラ一モニタ:1台を配置しています.当初,注腸造影読影用に白黒4面を縦置きで1列に配置していましたが,視線とマウスを動かす距離が長く実用的ではないと判断し,全て2面構成にしました.
これによってマウスの移動は円を描くようなスタイルになり,移動距離が最も短くなったのです.また,目の高さより下にモニタが並ぶように配買されているため,ドライアイになり難いという利点もあります.それぞれの端末は中心から120cmずつ離して設置しているので,その間にオーダリング端末と文献検索用インターネット端末を配置しています」(水沼部長).
同院では読影医の肉体的負担を極カ軽減させるため,トランスクライバーによるレポート作成が行われている.通常,読影医は端末の前でモニタに画像を展開し,フィリップス社製の入カマイクをオンにして目の前に賀き,マウスだけを握り画像から目を離さずレポートすることが可能である.関心領域には矢印やマークを入れることが可能で,素人目にも操作性に優れていると感じることができる.
今後は,1000スライス以上の画像をどのように読影していくか,また,3D画像構築のWorkstationがカラ一表示のため,カラ一モニタをどのように活用するかがポイントになるという.「読影作業としては,2モニタを並べて展開し,その下にテキストを配置する構成にスタッフ全員が慣れているので,100スライス以上の画像やカラー画像の見方についても研究する方向です.カラ一モニタの質が向上し,高精細モノクロモニタを導入しなくても済むように,例えば700cd(カンデラ)程度のカラ一モニタがあれば,問題ないと思っています」と水沼部長.

コミュニケーションの延長に..

救急の画像診断の場合,「ハンドフリーフォンで読影室全員に聞こえるように会話をしています.そこで『MRIを撮れ』とか『CTに入れて』という指示を出しています」(水沼部長).
サッカーでいうところの,“ボランチ”(舵取り)が放射線科の役割というところか.「次のステップで治療が必要という判断ならばすぐにIVRを行う指示を出しています」.指示は迅速に出す.「意思の疎通は早いですよ」と自信に満ちた表情で水沼部長は語る.
「ほとんどの画像は我々を経由して通らないと次のステップに動かないので,院内で何が起きているかはだいたい把握できてしまうのです」と水沼部長.交通事故で同院に担ぎ込まれて,CT→IVRでの止血までの平均時間が1時間~1時間20分.それまでに読影も,承諾も同意もとっているという.リアルタイムで診療が進んでい<.「普段のこういうシステムがなければ,救急の時にも対応が出来ませんからね.だから普段のコミュニケーションがないといくら電子化してもあまり意味がないのです」と水沼部長.
現在,500床以上の病院の10%はフィルムレス運用といわれ,PACS運用費が新設されるとなると,急激に30%まで上がると考えられている.しかし,システムだけができても意味がない.日常での専門の枠組みを越えたコミュニケーションこそがシステム運用成功の第一歩なのだと,大田原赤十字病院の取材で,そう感じた.(石川輝洋)

医療施設情報

大田原赤十字病院

栃木県の人口は約201万人.1949年にオープンし約60年,那須を中心とする県北地域の医療を支えている

  • 所在地
    栃木県大田原市