導入事例

CASE STUDIES

医療法人明浩会西大宮病院

ドクターPACS for
地域支援病院での遠隔・PACS運用(『IT VISION』 2009.Vol.17)

地域支援病院での遠隔・PACS運用(『IT VISION』 2009.Vol.17)

はじめに

当院の概要であるが,19733月に医療法人明浩会西大宮病院(68床)として設立。設立当初より一貫して地域に密着した急性期病院として運営。現在外来1日平均600人,病床数は急性期100床,リハビリ回復期50床。放射線科のスタッフは,診療放射線技師が10名,専属のクラーク1名である。

遠隔画像診断導入

当院での本格的なPACS運用(院内配信等)は2008年4月からであるが,遠隔診断の歴史は長く,1996年7月に1台目の超電導型MRI装置導入が契機となった。当時MRI装置を導入している一般病院は少なく読影に苦慮していたところ,遠隔診断プロバイダーを主としているドクターネットを選定し,同年末に遠隔診断読影を開始した。選定理由としては,単なる遠隔診断だけではなく,導入前に放射線科専門医が現場(病院)に足を運び,撮像方法・地域連携・今後の運用方法・展望などについてレクチャーしていただいた経緯からである。遠隔診断開始当初のシステムは,DICOMビューワ付きPC(汎用型)を遠隔端末として,モダリティはMRI・CT装置を接続した。その後,放射線科内にLANを敷設し,クライアントPC(汎用型)を数台接続して,遠隔端末を簡易的なPACSとしてMRI・CT画像のみであるが放射線科内での運用を開始した。当時のPCはハードディスクの容量も少なく運用面で不安もあったが,ドクターネット独自の圧縮・解凍技術によりセキュリティも保たれ,問題なく運用できた。当時よりユーザーインターフェイスに優れ,安価でセキュリティも保たれた遠隔プロバイダーはほかにはなく,地域連携のツールとして遠隔診断は現在でも当院になくてはならないサービスとなっている。

PACSの特長

2003年に新病棟を開設。既存の病棟はリハビリ回復期病棟とし,空中棟にて2つの建物を結んでいる。放射線科も新病棟に移転したがMRI装置だけ旧建物で稼働。新病棟建設の際に2つの建物を結ぶ空中歩道に何本かのLANを埋め込んだが,このことがフィルムレス化を成功させる一因となった。加えてかねてからの構想であった新規PACSサーバの設置場所を,既存のMRI装置更新の際にMRI機械室内にすることとした。理由は,常時20℃に空調が管理され,人の出入りがなくクリーンであるなど,サーバを設置するには最適な場所であるからである。放射線科移転1年後には新病棟に新規に1.5TMRI装置を設置し,2007年に64列マルチスライスCTを導入し旧病棟のMRI装置を1.5Tに更新。同時期にドクターネットの薬事承認遠隔画像診断支援サービス付きのドクターPACSに更新した。今回のPACS更新は,同年末に導入予定のオーダリングシステムとの連携も視野に入れての選定であった。

ドクターPACSの特長としては,まず保全性の高いサーバであることが挙げられる。RAIDを標準実装し,画像データ・レポートデータを冗長化システムにてリカバリーを実現。また,使用頻度の少ない夜間帯にシステムが自動的にデータのバックアップを行い,管理の手間を大幅に短縮できる。最大の特長は,院内・院外への高速な画像配信を行うFlexview配信を採用したことだ。Flexview配信とは画像アプリケーションを仮想的に利用する手法で,DICOM画像のように大容量データの転送に時間がかかるという,従来の画像配信の問題点が解決されている。Flexview配信は各クライアントPCでのファイルのダウンロードを行うのではなく,表示情報のみをサーバとやり取りするのでネットワークの負荷も最低限に抑えることができる。さらに,クライアントPCの動作は処理能力が高いアプリケーションサーバで仮想的に動かすため,クライアント側のPCは表示させる最低限のスペックで十分であり既存のPCを有効活用できるなどのメリットもある。

 また,医療データのやりとりをネットワーク上で行うには強固なセキュリティが担保されてなければならないなどの問題が多々あるが,地域連携ツールとして,SSL暗号プロトコールを用いユーザー認証にて外部からインターネット経由でFlexviewサーバにアクセスが可能であり,職場と同様の環境がどこにいても実現できる。例えば海外で患者さんの容態が悪くなった場合でも,インターネット環境さえあれば,当院で撮影した画像を現地で閲覧可能であり,迅速な治療ができる。

フィルムレス化への準備

当院のフィルムレス運用は,2008年度の診療報酬改定でデジタル映像化処理加算の大幅な削減,PACS運用での電子画像管理加算を踏まえ,4月からの開始を決めて準備を進めた。準備期間は1か月の短い期間であったが,PACSと各モダリティとの接続も完了し放射線科内では遠隔を含め順調に稼働しており,また院内では2007年末よりシーエスアイのMIRAIsのオーダーリングシステムがすでに稼働しており,2008年度は電子カルテシステムへの移行時期でもあった。その基幹部のLANGigabitEthernetを敷設し,全館のフィルムレス化の準備として,電子カルテシステムとの連携とモニタなどのハードウエア面の整備を行った。

電子カルテとの連携

院内への画像配信はFlexviewを利用。診断・患者説明は高精細モニタでの運用とし,各病棟・各診療科(一部診療科除く)に,電子カルテシステム端末モニタとは別に高精細カラーモニタ(ナナオ19インチ)を配置して,2面構成で運用している。また,画像参照・患者説明には,汎用の2M画像参照モニタを配置し電子カルテシステム端末モニタと2面構成で運用。上記2通りのクライアントPCの構成でフィルムレス環境を構築した。なお,単独の電子カルテシステム端末でも画像の参照は可能となっている(図1)。

 放射線科は,ドクターPACSとのサーバ・クライアント連携にて運用。4台のクライアントPC2台の2M高精細モノクロモニタ),電子カルテシステム端末3台・ワークステーション3台を配置し,3D画像作成・診断・検像・遠隔業務を行う。院外への画像出力は基本的にDICOMビューワ付きCD-Rを提出しているが,閲覧のできない施設にはフィルム出力で対応し,他施設からのDICOMCD-RPACSで取り込む運用としている。遠隔画像診断の実際は,当日の院内外の依頼は随時送信可能で,画像と付帯情報を一緒にセットし,1日に20件ほど専用の端末(汎用型PC)を用い,VPN回線にて自動送信している。もちろん緊急読影も対応可能である。翌日には,読影結果がPACSに自動的に取り込まれ電子カルテシステムでの閲覧が可能となる。院外にはFAXまたはEメールにて読影結果を送信する運用としている。

まとめ

 遠隔診断から始まった当院のデジタル化は,今回のPACS更新にて,電子カルテシステム・院内外との連携が実現した。今後の展望は,現在アナログの透視装置更新時に完全フィルムレス化することと,モダリティとの連携にDICOMMWMを導入することである。

 民間病院でのPACS導入は,ネームバリューや企業規模などによる選定でなく,地域連携ツール・電子カルテシステム連携・遠隔画像診断などの機能を備えた,拡張性の高い柔軟なPACSを選定することが重要と考える。

 

(はたの かずひと)1987年西大宮病院放射線入職。89年科城西医療技術専門学校診療放射線学科卒業。95年から同院放射線科技師長となり,2005年から同院診療技術部部長。日本磁気共鳴医学会会員,日本放射線技師会会員。

出典:IT VISION No.17 (2009)

医療施設情報

医療法人明浩会西大宮病院

1973年3月に医療法人明浩会西大宮病院(68床)として設立。設立当初より一貫して地域に密着した急性期病院として運営。現在外来1日平均600人,病床数は急性期100床,リハビリ回復期50床。放射線科のスタッフは,診療放射線技師が10名,専属のクラーク1名である。