株式会社ドクターネット

導入事例

CASE STUDIES

北海道対がん協会札幌がん検診センター /士別市立病院

マンモグラフィ遠隔画像診断支援システム/厚生労働省のモデル事業が乳がん診療に安心をもたらす(『DIGITAL MEDICINE』 no.41)

乳がんによる死亡者数は年間約11,000人。ピンクリボン運動などの社会的な啓蒙活動によって乳がんの認知度は確実に浸透しているが、年間4万人が新たに罹患者となることも事実である。国内における乳がん検診率は、欧米に比べまだまだ低い。厚生労働省は健康フロンティア戦略においてマンモグラフィの緊急整備を掲げ、全国にマンモグラフィが普及するに至っている。厚生労働省が乳がん検診の指針にマンモグラフィ検査の併用を加えたのが2000年。その後、健康フロンティア戦略では40歳以上の女性を対象に、マンモグラフィと視触診の併用による検診を促進している。

 厚生労働省によれば2007年度の市区町村が実施した乳がん検診の受診率は14.2%となっている。この受診率を高い水準に上げるためには、マンモグラフィの普及促進だけでなく読影業務をいかにスムーズに行うかが鍵となるが、検診マンモグラフィ読影医師・撮影診療放射線技師を急速に増員することは困難である。

 厚生労働省におけるがん対策の推進にて08年度236億円の予算を計上し、マンモグラフィの遠隔診断支援モデル事業に約2.8億円を割いている。北海道対がん協会ではこのマンモグラフィによる遠隔支援モデル事業に参画し、3ヶ月が経過した。モデルの全体像と使用の現状を取材した。

▲支援側:札幌がん検診センター

①支援側のサーバー②支援側の読影端末、5M のモニタを使用③外科部長・池田由加利医師④放射線技術部・黒蕨邦夫技師

乳がん検診の実状

北海道における乳がん検診の実施状況は05年度80,610人、06年度79,789人、2年合計160,399人となっている。受診率は17.6%と全国平均よりも高い実績がある。北海道における乳がんの現状を北海道対がん協会札幌がん検診センター外科部長・池田由加利医師は次のように語っている。

 「北海道の罹患率は統計を見ると全国平均よりも高いようです。乳がんが早期発見できれば治療できるがんであることを皆さんに啓蒙しつつ、早期発見のための体制を地域でしっかり構築することが大切だと考えています。検診受診率は全国平均よりも高いですが、欧米と比べまだまだ低いのが現状です。この数字をできるだけ上げていきたいのですが、マンパワーなど解決すべき問題は多いですね」。

 北海道対がん協会(札幌・旭川・釧路)が実施している乳がん検診は北海道内の約170市町村に及び、全道受診者の約80%をカバーしているという。札幌がん検診センター施設内にて行われる乳がん検診は年間約27,000件、検診車による検診が年間約13,000件、札幌だけでも約4万件の乳がん検診に対応している。その内、年間約3万件のマンモグラフィの読影を池田医師が行っている。「検診車によるマンモグラフィの画像をチェックすることは少ないですが、センターで受診される方の画像は全てチェックしています。また、マンモグラフィの読影は二重読影を基本としているため、札幌市内の医師にも読影を依頼しているのが現状です」。池田医師は読影業務の他に超音波検査、触診、精査と多忙な業務をこなしている。

 今年3月より遠隔読影システムを利用したマンモグラフィ読影支援ネットワークのモデル事業がスタートした。概要はマンモグラフィ読影認定医が少ない道内各地域の医療機関とネットワークを結び、それらの医療機関で撮影されたマンモグラフィの画像を札幌がん検診センターで読影支援するというもの。現在、依頼側施設は道内5ヶ所の医療機関。依頼側はマンモグラフィの画像を送信し、支援側は結果レポートを送信する。システムの構築を行ったのは医療IT企業の㈱ドクターネットである。同社は岐阜県のJA岐阜厚生連におけるマンモグラフィ遠隔画像診断地域連携システムの構築にも携わり、同分野での豊富な経験を持っている。こうしたITによる支援の必要性について池田医師に聞いてみた。

 「北海道の大都市以外の地域では全国的にも問題になっているように医師不足が深刻化しています。私自身、数年前まである地域の中核病院で外科医をしていましたが、野戦病院のごとく、どのような疾患でも対応する必要がありました。乳がんの患者さんが増える状況で、マンモグラフィを専門の医師に読影してもらえれば安心して治療を行うことが可能です。特に北海道は広く、距離の問題があって簡単に人が動くというわけにはいきません。冬期の移動は困難な場合もあります。ITの恩恵、特にマンモグラフィの遠隔画像診断は、かなり利便性の高い社会インフラだと思います。こうしたシステムに参加したいという依頼先の医療機関は道内に多くあると考えています。全道で本格的にシステム運用するにはもっと支援体制やコストを考える必要があるとは思いますが、将来、さらにネットワークが広がる可能性はあるのではないでしょうか」(池田医師)。

 マンモグラフィの場合、厚生労働省は専門医による二重読影を提唱している。「北海道の地方で2名のマンモグラフィ読影医を確保することは非常に困難です」(池田医師)。となるとこうしたITの活用に大きな期待が集まるのもうなずける。

モデル事業の実像

 モデル事業は、厚生労働省が実施した公募に北海道対がん協会として参加の意向を示したところからスタートする。依頼側の選択などについて札幌がん検診センター放射線技術部・黒蕨邦夫技師に聞いてみた。「なるべく広い地域に分散したいと考え、石狩地域、空知地域、十勝地域、釧路地域、上川地域から依頼側を選びました。さらにその地域の医療機関の選択では、普段から乳がん検診に協力している医療機関ということ、デジタルマンモグラフィが整備可能ということ、それから専門医がいるということです。このモデル事業は、一次読影は現地で行っていただき、二次読影を札幌がん検診センターで行うという仕組みです。用途としては二次読影だけでなく、普段はその病院で診療していないケース、読影の困難なケースなどもお送りいただけるようになっています。当施設の乳腺外科には池田医師だけでなく北海道大学の専門医も非常勤として勤務されているので、いろいろな方のコメントをもらうことができるのです」。

  同システムは一つの通過点でしかない。こうしたインフラを整備し、将来的にはさらに拡張する可能性があると示唆している。「検診車のマンモグラフィ装置はアナログですが、これをデジタル装置に更新し、北海道対がん協会の釧路と旭川をハブとしてそこからネットワークを介して札幌にデータを送信することで、検診から読影までの効率を向上させることができると考えています。これは近い将来実現できると思います」(黒蕨技師)。

使いやすいシステムの開発

システム運用から数ヶ月が経過したが、現在までにシステム上のトラブルはないということだ。モニタ診断についても聞いてみた。「モニタ診断にはまだまだ問題、課題があると感じています。おそらく様々な施設で問題になってくると思いますが、フィルムからモニタに変わるとやはり読影、診断の基準が変わってきます。最初はそこで少し困惑することもありましたがだんだん慣れて、現在は問題なく読影できるようになっています」(池田医師)。さらに黒蕨技師は、「画像を作る側としては、どこで撮影してもある程度同じイメージでモニタ上に表示できる、品質の管理が重要です。依頼側の画像の品質管理というのは、依頼側、支援側の技師同士が一緒に取り組んでいくべき課題だと考えています」と語っている。

 モニタやシステムについてはカスタマイズを何度も繰り返し、現状ではかなり使いやすいシステムになっているということだ。使用している読影用モニタはナナオ社製の5Mモニタ。高解像度で読影への支障はないとのこと。

 システム上での特徴を黒蕨技師に聞いてみた。「レポーティングシステムですね。システムは医師と技師、そしてドクターネット社が一緒に開発したものです。何度も改良を加え使いやすい完成度が高いシステムになっています。検診の場合には大量の読影を行いますので、あまり煩雑なレポートシステムだと業務フローに影響します。できるだけ簡素、しかし必要なことは網羅されているというシステムを構築する必要がありました。これが大手メーカーだとカスタマイズに制限があったり、時間がかかったりと大変なのですが、その点同社は良いものを作りたいという気持ちがありますので、非常にありがたいなと感じています」。

 最良なレポーティングシステムを作るポイントを黒蕨技師は次のように語っている。

 「乳がん検診の場合は、基本的に所見がないというところから始まります。当然のことながら、検診結果で所見がない場合には、それで終わりです。不幸にして所見があるという方は、100人中5人くらいです。マンモグラフィの判定ではアメリカ放射線学会(ACR)が標準化した5段階のカテゴリー分類を日本でも導入しています。同システムではまず所見がある場合は、カテゴリー3にマークが入っています。専門医が『3より上だ』という場合に初めて「操作」が必要になります。こうしてクリックの数、書き込みの数を減らしているのです。画像の展開も、読影パターンに従って、ショートカットキーなどで次の画面、次の画面と導くようになっています」。

ネットワークの拡大に

同支援システムの運用実績は現在、各施設40/月で運用されている。現状ならば1週間以内には依頼画像の結果を返すことができるということだが、通常2週間以内には結果を返信できる体制が敷かれている。

 サーバーや読影環境整備、通信インフラなどは国からの補助となるが、実際の運用は各モデル地域の負担で今後は継続していくことになる。「読影料などを設定し、このシステムを実際の事業として稼動していくステージへと移行しつつあります。大切なインフラですからできるだけ長く存続させたいと考えています」(黒蕨技師)。

 池田医師に同事業の将来について聞いてみた。「短期の目標としては、ネットワークを使って地域の検診を増やしていくというのはもちろんですが、新たにこの事業に参加をしたいという医療機関と連携し、検診受診率を30%、50%と段階的に上げるというのがまず一番の目標です。長期的には、マンモグラフィだけではなく、他のモダリティでも同じようなモデルを実現したいですね。肺や消化管の専門医が少ない地域は多いというのが現状です。遠隔支援システムによって、地域の受診率を上げ、早期発見・早期治療による健康増進と医療費抑制に貢献できればと考えています」。

 将来的には、同ネットワークにCADComputerAidedDetection)などの処理機能を付加させ、さらなる効率化を図るという。広域な北海道をカバーするために導入されたネットワークシステム、その投じられた一石は北海道の検診事業を新たな時代へと導く重要な意味を持っているように思える。

出典:DIGITAL MEDICINE no.41

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