導入事例

CASE STUDIES

JA 岐阜厚生連

ドクターPACS for

岐阜県内の5施設をネットワークして乳がん検診の遠隔診断支援モデル事業がスタート(『DIGITAL MEDICINE』Vol.7 No.3)

岐阜県厚生農業協同組合連合会(JA岐阜厚生連)は、厚生労働省の実施する「2006年度マンモグラフィ検診遠隔診断支援モデル事業」のひとつとして、マンモグラフィの検診画像をネットワークで送受信し専門医による読影を行う遠隔診断支援システムを構築した。山県市の岐北厚生病院を中心医療機関として、東濃厚生病院(瑞浪市)、西美濃厚生病院(養老郡養老町)、久美愛厚生病院(高山市)、岐阜県労働基準協会連合会(岐阜市)と岐阜県産業保健センター(多治見市)の5施設をネットワークして7月から運用がスタートした。遠隔診断支援システムのシステム構築は㈱日立メディコと㈱ドクターネットが担当した。「支援側医療機関」の岐北厚生病院の山本悟院長と高垣昌司事務局長にシステムの概要と運用の現況を取材した。また「依頼側施設」の岐阜県労働基準協会連合会労働衛生センターの小川創副部長と吉川典子主任に、マンモ検診の運用の実際をインタビューした。(M)

モデル事業のトップを切って運用開始

モデル事業は、マンモグラフィ検診の促進のためマンモグラフィの読影専門医の確保が困難な地域でもマンモ検診が実施できるよう遠隔診断支援システムを構築し「全国的な展開のための課題等の検証を行うこと」を目的に実施され、全国7ヶ所グループが参加している。JA岐阜厚生連の今回のモデル事業への取り組みの経緯を高垣事務局長はつぎのようにいう。「岐北厚生病院の乳がんへの取り組みは07年度日本対がん協会賞を受賞された樫木良友先生(現朝日大付属村上記念病院教授)が1977年に院長に就任されたのを機に始まり、以来、乳がんの検診、診療には力を入れてきました。山本悟・現院長も乳腺が専門であり地域の乳腺医療の拠点病院として、今回のモデル事業には是非参加したいと考えていました」。山本院長はマンモ検診の遠隔診断支援システムをつぎのようにいう。「日本の医療の問題のひとつは、医師の偏在による地域格差です。その解決のためには、画像情報などのデータを専門医へ送ることができれば、患者さんが移動せずに適切な医療を受けられます。乳がんは検診による早期発見が期待されていますが、精度管理の点からマンモグラフィを読影する専門医の不足が課題でした。今回のモデル事業はネットワークを活用した遠隔画像診断の運用を行い、今後の普及への課題を検証することが目的です」。モデル事業は、中心となって読影業務を担当する支援側医療機関1施設と依頼側5施設をネットワークすることが原則となった。岐阜県厚生連では、認定医6名を有する岐北病院を支援施設として東濃、西美濃、久美愛の厚生連3病院と民間から労働衛生センター、産業保健センターが参加した。「参加施設は、デジタルマンモグラフィが導入されていること、施設・巡回を含めて乳がん検診を行っていることが条件となり、職域や自治体検診を多く手掛けている民間施設を含めたネットワークとなりました」(高垣事務局長)。

決定から稼働まで3ヶ月の短期間で構築

厚生労働省からモデル事業の要綱が発表されたのが072月、3月に申請があった中から7ヶ所が決定した。「モデル事業の運用スタートは7月ということで、決定から3ヶ月しかありませんでした。4月に『マンモグラフィ検診遠隔診断支援モデル事業運営協議会』を立ち上げ、厚生連本所(本部)と参加施設、ベンダを加えて協議を開始し、仕様決定から稼働までを行うという厳しいスケジュールでしたが、各方面の協力で何とか7月にスタートできました。おそらくモデル事業の中では全国で最初ではないでしょうか」(同)。システム構成は、センターである岐北厚生病院と依頼側5施設をインターネットで結んで画像データを送信し、岐北病院の認定医がモニタ読影を行いレポートを返信する。遠隔読影システムの開発と構築は日立メディコとドクターネットが行った。遠隔診断システムは、ドクターネットのドクターPACSをもとにマンモ検診読影用システムを開発した。岐北病院には、画像サーバと読影用の端末(5M高精細液晶モニタ2面とレポート用カラー液晶モニタ)が2セット導入されている。「操作が簡単で、PCと同じ感覚で使うことができます。モニタによる本格的な読影は初めての経験でしたが、フィルムに比べても表示が早くウィンドウレベルの変更や拡大などが行えますので読影の精度とスピードが向上しました」(山本院長)。乳がん検診では、画像はダブルチェックすることが求められている。「レポートの画面上には、受診者に対して2つのウィンドウが表示され2人の認定医がチェックできます。1次読影の際には片方がアクティブになり、その読影が終了しないと2次側には入力できません。2次読影は1次読影のレポート内容を参照して所見を作成できます。レポートは、シェーマや入力項目などマンモ診断に特化されていて使いやすいシステムです」(山本院長)。

ネットワークとモニタ診断で効率化と正確な運用が可能

運用最初の7月の読影実績は416件。初年度の読影目標件数は9000件。山本院長は遠隔診断支援システムの手応えをつぎのようにいう。「計画段階ではフィルムでの読影作業をベースにして件数を計算したのですが、実際にスタートしてみると、モニタ診断のほうが想像以上に効率がよくもう少し件数を増やせそうです。フィルムの出し入れやシャーカステンへのセッティングがなく、リストから選択すれば画像が表示されますので、受診者の取り違えの心配もありません。モニタ読影によって確実に読影のスピードアップと正確性の向上に繋がっています。ビューアの操作など機器に慣れればさらに読影スピードはあがるでしょうし、診察の空き時間などに少しずつでも読むことができますので、効率よく作業できます」。

レポート用式の統一など、標準化がこれからの課題

ネットワークのメリットを高垣事務局長はつぎのようにいう。「フィルムでは、読影医のいる大学病院等へ運んで読影終了後所見とともに回収する必要があり、依頼から結果返送まで時間と人手がかかります。ネットワークでは、ボタンひとつで送信でき、1日2日で結果が返ってきます。また、依頼側ではフィルムレスで、収納や管理の必要がなくコスト削減になります」。システム導入の中で、苦労したのが検診の結果書(レポート)のフォーマットの統一だったという。「検診施設は自治体からの委託で検診を行っていますが、乳がん検診の結果報告書の書式が自治体ごとにバラバラでした。そこで今回のレポートシステムでは、さまざまなパターンの書式をリサーチして最大公約数のレポートが作成できるようにしました。今後は、システムの使い勝手やネットワークの運用はもちろんですが、現在自治体ごとに異なる結果報告書が統一され、このシステムで出力されたレポートがそのまま結果報告書として自治体に提出できればいいですね」(高垣事務局長)。山本院長は、今後の方向性をつぎのように語る。「今回のモデル事業は全国7ヶ所で行われていますが、そこで得られたデータが今後の展開ための基礎になります。取りあえず我々は1年程度経過した時点で学会などで成果を発表できればと考えています。他の地区の成果なども参考にしながら、全国展開に向けてシステムを成熟させていけるといいですね」。今後の成果が、ネットワークを活用した乳がん検診に活かされることを期待したい。

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JA 岐阜厚生連

岐阜県厚生農業協同組合連合会(JA岐阜厚生連)は、厚生労働省の実施する「2006年度マンモグラフィ検診遠隔診断支援モデル事業」のひとつとして、マンモグラフィの検診画像をネットワークで送受信し専門医による読影を行う遠隔診断支援システムを構築した。山県市の岐北厚生病院を中心医療機関として、東濃厚生病院(瑞浪市)、西美濃厚生病院(養老郡養老町)、久美愛厚生病院(高山市)、岐阜県労働基準協会連合会(岐阜市)と岐阜県産業保健センター(多治見市)の5施設をネットワークして7月から運用がスタートした。

  • 所在地
    岐阜県